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  • Emiko Manners

瞑想とかマインドフルネスとか①

近年、アプリやその他のツールが進化し、多くの人々がマインドフルネスや瞑想を取り入れやすくなった。私の夫も2年以上前から瞑想を継続しており(熱がある日以外、本当に毎日休むことなく続けていることは正直凄いと感心している 笑)、その結果、体調が改善され、雑念にとらわれず仕事がしやすくなったと言っている。

 

私が初めてマインドフルネスに触れたのは、2004年、大学一年生の時、アメリカの大学でのことだった。当時「マインドフルネス」という言葉は使われていなかったけど、金曜日のダンスの授業の最後をボディスキャンというマインドフルネス瞑想で締めくくってくれる先生がいた。それは、ただ目をつぶって、呼吸を整えた後に、自分の身体の各部位に順番に意識を向けていくだけの簡単なものだった。最初は不思議な事をやっているなと思っていたが、何度か経験するうちに、ボディスキャンをした後、驚くほど身体とマインドがすっきりしていることに気づいた。そして、自分でも不思議なくらい自信を取り戻してポジティブな気持ちで週末を迎えられる事ができたのだ。当時、アメリカの大学での生活は忙しく、毎日4-6時間くらいダンスやバレエを練習した後、明け方まで図書館にこもって勉強していた。そんな中、ダンスの授業で行われたボディスキャンや、瞑想、ヨガなどが私の精神的・体力的な支えとなっていた。

 

そこから約20年が経ち、仏教で何千年もの間プラクティスされている瞑想・マインドフルネスによって身体や脳で何が起きているのかという科学的な理解が進み、私はスポーツ心理学の大学院で再びそれらに触れ、今度は科学的な観点から勉強することになった。瞑想と聞くと「無になる」、「脳を休ませる」というイメージが強いかもしれない。これらも間違ってはいないのだけど、私の中で一番しっくりくるのは、瞑想は「心の筋トレ」だという考え方だ。

 

辛い事があったり、怒りや焦りが溜まっている時、その大きなネガティブな感情に押し潰されそうになった経験は、多くの人が経験しているだろう。大きな感情を痛みや不快感として身体で感じることもあるかもしれない。こうなった時、色々な反応が起こる。ストレスが高いので身体のサバイバルモードがスイッチオンになり、呼吸が浅くなったり身体がガチガチに固くなる反応。イライラや怒りを他人にぶつけてしまう反応。殻に閉じこもってしまう反応。そういった時は感情に埋もれている状態が多いと考えられる。自覚があったまま埋もれているならまだ良い。埋もれていることにすら気づかず、何の感情に支配されているのか気づかないことが多いだろう。

このような状態の時にはネガティブの反射回路が働いてしまう。反射というだけあって、その同じ人が冷静な時に意思をもって反応するやり方とは違う形で表れる事が多い。子供に感情的になって怒鳴ってしまう大人や、プレッシャーのあまりキーパーの居場所を確認せずに焦ってシュートしてしまうサッカー選手等、ネガティブな反射回路がその人の意思に反して働いてしまう場面は沢山見受けられる。

ネガティブな感情に押しつぶされていない場合でも、何となくやる気がなく、集中力も続かずダラダラ過ごしてしまったことがある人もいるだろう。自分の目標に向かっていくためにやるべきことが沢山あるのに、目の前にある快楽(Netflix鑑賞とか)を無意識のうちに選んでしまった経験はないだろうか。こういった時もやはり、自分で意識的に何かをやろうと選ぶ前にネガティブな脳の神経回路が反射的に働き、結果自分が求めている本来の生産的な行動が難しくなる。

雑念にとらわれて集中できない、注意散漫になる、感情に埋もれている、昔や将来のことが気になりすぎて現在に集中できない。こういった状態に対し、瞑想という名の心の筋トレをすることで、より「自分が求める」選択を選ぶことができると考えられる。

 

では瞑想では何をしているのだろうか。

瞑想ではよく何かに集中を向ける練習をする。それが自分の呼吸や身体の一部分、特定の思いだったり、部屋にある何か一点だったりする。例えばネガティブな感情が脳内を独占してグルグルと思考を巡らせているとしよう。意識をいったんその感情から別のところに移動することによって、感情との距離ができるのだ。自分の心を客観的に覗く、といった感じだ。一旦別にものに集中ができたとしても、数秒後には再びネガティブな感情に意識が引き戻される事がある。その時に‘Refocus‘(再度集中を戻す)練習をするのが大切だ。ネガティブな反射経路にいく前に、あるいはいってしまった後に、ポジティブで本人の意思が伴った反応に戻す力を強化しているイメージだ。このトレーニングを続けることで、自分にはどうしようもないと思っていた重くて大きな感情と程よいバランスを保ち、うまく付き合うことができるようになっていくのだ。それは感情に蓋をするのではなく、あくまで客観視しつつ、自分の求める選択を一瞬一瞬していくということである。

 

近年の研究で瞑想を行う事で実際に脳の活動部分が変化し、長期的には脳の構造まで変えることができるとわかっている。例えばハーバード大学の研究によると8週間瞑想を行った人は、そうでない人に比べて、記憶、自己認知、共感、ストレスに関係する脳の領域に改善が見られた。また別の研究でも瞑想を行っている個人には注意とEI(エモーショナルインテリジェンス)に関連する領域で大脳皮質の厚みが観察されている。このように近年の様々な研究では瞑想・マインドフルネスがリラックスだけではなく、記憶力・学習能力の向上、自己認知能力や共感性の向上にもポジティブな影響を与えることが明らかになっている。Eight weeks to a better brain — Harvard Gazette

 

少し長くなってしまったが、こんな奥深いマインドフルネス、瞑想について、②ではその種類と応用方法についてまとめてみたいと考えている。

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