スポーツ心理学とは何か?
- Emiko Manners
- 2023年7月10日
- 読了時間: 4分
更新日:2024年7月8日
スポーツ心理学とは何か?
第一回目の投稿として、今日はそもそもスポーツ・パフォーマンス心理学とは何か、簡単にお話したいと思う。
最近ではスポーツ以外の芸術家や、ビジネスパーソンに応用されることが増えた事により「スポーツ&パフォーマンス心理学」と呼ばれるようになったこの分野だけど、元々の「スポーツ心理学」が注目を浴び始めたのは1900年代初期頃だと言われている。のちにスポーツ心理学の父と言われたColeman Griffith等、著名な学者がスポーツスキルの心理学的要素や心理変数とスポーツ・パフォーマンスの関係について等研究し、この領域の基盤を築いたと言われている。Griffithは当時シカゴ・カブス専属のメンタルコンサルタントでもあり、スポーツ心理学をプロのスポーツのチームに応用したという点でも先駆的だったと言える。この領域の当時の中心は主にドイツ、ロシア(ソ連)、そしてアメリカ。更に1960年代にはアスリートのモチベーション、メンタルタフネス、ストレスに向き合う方法など、今の学問につながるような様々なメンタルスキルトレーニングが考案されていった。また1965年に国際スポーツ心理学会が組織されたことを皮切りによりこの分野がより国際的に広がっていき、1980年代頃からより組織だった動きが活発化し、特に専門家としての資格やライセンス等の交通整備も各国で行われていった。
と、ここまでざーっと読んで、いかにこの領域が新しく現在進行形なのかがわかると思う。日本においては、1973年に日本スポーツ心理学会(JSSP)が発足され、2000年にはJSSPによるスポーツメンタルトレーニング指導士の資格認定が開始されている。まさにこれからより成長していく分野だといえる。情報は私が勉強していた2年間の大学院時代の間にも日々アップデートされていく感じがあり、また教授によっても信じる研究結果が違うので言っていることが結構まばらだったりした。元アスリート、ダンサー、音楽家の教授が多いこともあり、自身の実体験を元にメンタルトレーニングを編み出す人が多く、裏付けるサイエンスがまだ追いついていないケースも多かったように思える。
スポーツ・パフォーマンス心理学は、スポーツにおけるパフォーマンス、モチベーション、メンタルスキル、そして包括的なウェルビーイングの心理的な要素、影響を勉強する学問であり、また研究や実験証拠を元に効率的にパフォーマンスやウェルビーイングを求めるためのノウハウを個人に応用する学問だと言える。最終的に目指すのは個人の求める理想・幸せの形。答えが一つではない世界のなかで、個人が求める主観的な幸福感を目指すための学問とも言えるだろう。
今まで臨床心理学はどうしても精神疾患やメンタルヘルスの課題に焦点を充てることが多く、特にメンタルヘルスの問題がない人がより幸せになるための学問や心理学のポジティブな側面に対し科学的なアプローチをとり、主観的幸福感の促進を目指している学問があまりなかった。スポーツ心理学を語るうえで、ポジティブ心理学を無視することはできないだろう。
そんな時代と共に進化し続けるこの領域のなかでカバーされるトピック例は以下の通り。
―Ethics(ジェンダー、人種、倫理問題、アドボカシー、メディアの影響力等)この辺りの学習はアメリカの大学院では大変細かく、丁寧に行う。
―精神病理学とカウンセリング、
―運動学習
―運動栄養学
―人間発達学
―メンタルスキル
ルーティンの設定・見直し
モチベーションの種類
ゴール設定・実行
イメージトレーニング、ビジュアルトレーニング
セルフトーク・行動変容技法
注意集中技法
リラックス方法
ストレスのコーピング、
チームダイナミックス、リーダーシップ論
近年においてはテクノロジーの進化に伴い、バイオフィードバックやニューロフィードバックといった新しい方法も加わることがある。
わくわくする楽しい分野でもあり、日本においても興味をもつ人が増えたら嬉しいなと思う。